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東京高等裁判所 昭和56年(ネ)1402号 判決

第一三三九号事件控訴人・第一四〇二号事件

被控訴人(一審被告)

天栄村

右代表者村長

松崎岩男

右訴訟代理人

滝田三良

右補助参加人

小針源兵衛

右訴訟代理人

武藤節義

右補助参加人

北畠雄太郎

右補助参加人

森武司

右補助参加人

北畠豊彦

右三名訴訟代理人

箱崎丈助

妹尾佳明

第一三三九号事件被控訴人・第一四〇二号事件

控訴人(一審原告)

伊藤建設株式会社

右代表者

伊藤末吉

右訴訟代理人

田宮甫

堤義成

齋喜要

坂口公一

鈴木純

主文

一  第一三三九号事件控訴人(第一四〇二号事件被控訴人)の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

(一)  第一三三九号事件控訴人(第一四〇二号事件被控訴人)は第一三三九号事件被控訴人(第一四〇二号事件控訴人)に対し金四九〇六万七四六二円及び内金二三九四万一七三八円に対する昭和五〇年九月一一日から完済まで年六分の割合による金員の支払をせよ。

(二)  第一三三九号事件被控訴人(第一四〇二号事件控訴人)のその余の請求を棄却する。

二  第一三三九号事件被控訴人(第一四〇二号事件控訴人)の控訴を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを二分し、その一を第一三三九号事件控訴人(第一四〇二号事件被控訴人)の、その余を第一三三九号事件被控訴人(第一四〇二号控訴人)の各負担とする。

事実

〔申立〕

第一三三九号事件控訴人・第一四〇二号事件被控訴人天栄村(以下「一審被告」という。)

「原判決中一審被告敗訴の部分を取り消す。第一三三九号事件被控訴人・第一四〇二号事件控訴人伊藤建設株式会社(以下「一審原告」という。)の請求を棄却する。一審原告の控訴を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも一審原告の負担とする。」との判決を求める。

一審原告

「原判決中一審原告敗訴の部分を取り消す。一審被告は一審原告に対し金四四五八万三一四七円及びこれに対する昭和五〇年九月一一日以降完済まで年六分の割合による金員の支払をせよ。一審被告の控訴を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも一審被告の負担とする。」との判決並びに右金銭支払を命ずる部分についての仮執行の宣言を求める。

〔主張及び証拠〕

次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決一二枚目裏七行目に「被告」とあるのを「原告」と訂正する。)。

一  一審被告の主張

(一)  一審原告は、昭和五〇年五月三一日までに本件請負工事をすべて完成し、一審被告に引き渡した旨主張するが、右工事の完成及び引渡があつたのは昭和五二年八月三〇日である。すなわち、本件第一次請負契約における工期は当初昭和五〇年三月二〇日までと約定されていたが、昭和四九年八月二七日に工期を昭和五二年三月二〇日までと変更することが合意され、これに伴つて請負代金額が四一五〇万円増額されるとともに工事の引渡時期、請負代金支払時期も右工期に合わせて昭和五二年三月三一日に変更された。一審原告は昭和五二年三月一〇日一審被告に対し工事完成届を提出したので、一審被告は同年五月下旬に検査を行つたが、その結果工事の不備が発見された。この間において、同年三月三〇日一審原告と一審被告との間で覚書(乙第三九号証)が作成され、当時における本件請負工事代金残額一億七五〇六万七七〇〇円のうち一億一五〇〇万円を同月三一日に支払い、残金六〇〇六万七七〇〇円は一審被告による竣工検査終了直後に支払う旨の合意が成立した。そして、一審原告の工事は昭和五二年八月三〇日にようやく竣工検査に合格したものである。

(二)  一審原告の天栄作業所の所長であつた長根博(以下、単に「長根」という。)は、本件工事について、一審原告を代理し、一審被告に対する工事内容の変更申請、請負代金の増減額に関する交渉及び決定、下請業者の選定、下請代金額の決定及びその支払、物品の購入、現地での作業員の採用、賃金の決定を行う権限を有していた。したがつて、仮に長根が一審被告から本件請負工事代金を受領する権限を有しなかつたとしても、右天栄作業所は一審原告の支店としての実質を備えていたものであり、長根は商法四二条の表見支配人にあたるところ、同人が一審被告から本件請負工事代金を受領するのは右支店の営業に関する行為であるから、同人に対してされた本件工事請負代金の支払は、一審原告に対する弁済としての効力を有するものというべきである。

長根が請負代金の受領権限を有しないことについて一審被告が悪意であつたか、又は右権限ありと信ずるについて一審被告に重過失があつた旨の一審原告の主張は争う。

(三)  本件第一次請負契約に基づいて一審原告の施工した工事は、水道管回りの防護砂が敷設されていない箇所が一〇箇所合計一四九〇メートルにも及んでいる不完全な工事であり、右債務不履行によつて一審被告の被つた損害は三〇〇〇万円を下らない。なお、そのほかにも一審原告が債務の本旨に従つた工事をしなかつたことにより昭和五二年八月一一日から昭和五六年八月二八日までの間八〇回にわたり漏水事故が発生し、一審被告は多大の損害を被つている。よつて、仮に一審被告が一審原告に対しその主張のような請負残代金債務を負担しているとすれば、一審被告は、右損害賠償債権をもつてこれと相殺する。

二  一審原告の主張

(一)  長根は、天栄村工事請負契約約款(乙第一号証の二)五条三項にいう現場代理人として、工事の工程管理及び品質管理を行つていたにすぎないものである。また、一審原告が一審被告に対し請負代金受領について長根に代理権を授与する旨を表示したことはなく、前記約款一七条の定めるところにより一審被告が右授権を承認した事実も、一審原告が一審被告に対して提出した支払請求書等に長根が一審原告の代理人として記載された事実もない。右によれば、長根の権限は前記約款により限定されており、一審被告との関係では、同人に営業の主任者であることを示す名称が付されていたものとはいえず、また、同人が支配人らしく振舞うこともありえないものというべきである。したがつて、長根は、商法四二条にいう表見支配人にはあたらない。

(二)  仮に長根が表見支配人にあたるとしても、一審被告は、長根が請負代金の受領権限を有しないことについて悪意であつた。このことは、本件工事請負契約の締結に際して請負代金は第一勧業銀行大森東口支店(同支店が大森支店に統合されたのちは大森支店)の一審原告の当座預金口座に振り込んで支払う旨の約定がされていたことや、前記のとおり天栄村工事請負契約約款により現場代理人の権限が定められており、また、請負代金の受領に関する授権については一審被告の承認が必要とされていたことによつても明らかである。仮に一審被告が悪意でなかつたとしても、右のような事情及び一審被告が公金を扱う地方公共団体として特に厳格な注意義務を要求されていることに照らせば長根を支配人と速断した一審被告には重大な過失がある。

三  証拠関係〈省略〉

理由

第一請負代金請求について

一原判決摘示の請求原因1ないし6項の事実は、当事者間に争いがない(もつとも、一審被告は当審において本件請負工事の完成、引渡は昭和五二年八月三〇日であると主張し、右は請求原因5項の事実に対する自白を撤回する趣旨と解されるが、本件記録によれば、一審被告は原審においていつたん右一審原告主張事実を争つたのち原審第二一回口頭弁論期日において右事実を自白したことが明らかであるから、右自白の撤回は時機に遅れた防禦方法の提出というべく、かつ、それが訴訟の完結を遅延せしめるべきものであることも、その内容及び従前の審理の経過に照らして明白である。よつて、当裁判所は、民事訴訟法一三九条により職権で右防禦方法を却下する。)。

二権限ある代理人に対する弁済、受取証書の持参人に対する弁済、表見代理人に対する弁済の抗弁について

当裁判所も、右抗弁は理由がないものと判断する。その理由は、次に付加、訂正又は削除するほかは原判決の理由中第一の二(原判決二一枚目表四行目から三八枚目表五行目まで)に説示されたところと同一であるから、これを引用する。

(一)  〈証拠関係省略〉

(二)  原判決二三枚目表六、七行目に「現場諸経費の出納事務等」とあるのを「小口の現場諸経費の支弁等の事務」と、同裏五行目に「基つき」とあるのを「基づき」とそれぞれ改める。

(三)  原判決二五枚目表一〇行目の「ところが、」から同裏の末尾までを、次のとおり改める。

「もつとも、前記の同年五月二七日の金七三万九六四六円の弁済(同項(二))は、一審被告の水道課長北畠豊彦(以下「北畠水道課長」という。)の口添えもあつて長根に対して現金で支払われ、同人はこれと前後して同じ金額を一審原告の前記口座に小針収入役名義で振り込んで送金した。

同年六月二五日ごろ、一審原告は本件第一次請負契約による請負代金債権のうち一億四〇〇〇万円を第一勧業銀行に、八〇〇〇万円を太陽神戸銀行に、五〇〇〇万円を都民銀行に譲渡することとして一審被告の承諾を求め、一審被告はこれを承諾した。しかし、右債権譲渡がされたのちも請負代金の支払方法としては当初の約定どおり一審原告の前記口座に振り込むべきことが関係者間で了解されていたので、一審被告の一審原告に対するその後における前記の」

(四)  原判決二六枚目表七行目の「支払われた」の次に次のとおり付加する。

「(なお、前記譲渡にかかる債権は、その後昭和五二年七月一二日に再び債権譲受人たる各銀行から一審原告に対しその残額全部が譲渡され、右各銀行から一審被告に対しその旨の通知がされている。)」

(五)  原判決二八枚目表九行目の「企てた。」の次に次のとおり付加する。「なお、前記債権譲渡については、それが請負代金の支払の繰延べの障害になるとして一審被告の部内で問題になつていたが、長根は、同年一月ごろ一審被告執行部に対し、右債権譲渡契約は解除され、さきに一審被告村長が作成した債権譲渡の承諾書は長根が廃棄したと事実に反する説明をし、一審被告村長らは右説明を信じた。」

(六)  原判決二九枚目裏二行目の「乙第五号証」の次に「、日付は昭和四九年八月二七日に遡らせて記載されているもの」と付加する。

(七)  原判決三〇枚目表六行目の「原告が」の次に「昭和四九年七月三〇日ごろ」と付加する。

(八)  原判決三一枚目表二行目から八行目までを削除する。

(九)  原判決三二枚目表八行目に「受けたこと」とあるのを「受けたい趣旨」と改める。

(一〇)  原判決三三枚目表三行目の「認められ、」の次に「成立に争いのない乙第四三、四四号証、」を、同四行目の「小針源兵衛」の次に「、当審証人長根博」をそれぞれ加える。

(一一)  原判決三四枚目裏七、八行目に「長根がその後間もなく原告に右請負代金直接受領の事実が発覚しないよう」とあるのを、「右金員を受け取つた長根がその前後に」と改める。

(一二)  原判決三五枚目表六行目の次に次のとおり付加する。

「しかも、前記のとおり債権譲渡がなされた債権額の限度では、請負代金債権自体が一審原告に帰属していなかつたのである。」

(一三)  原判決三六枚目裏二、三行目に「守られていたにもかかわらず、被告は、右約定に違反して」とあるのを次のとおり改める。

「守られており、また、前記のとおり債権譲渡がされていたにもかかわらず、一審被告は、右約定に違反し、かつ、右債権譲渡契約が解除されたとの長根の言を軽々に信じて」

(一四)  原判決三七枚目表末行の「著しい」を削除し、同裏六行目の「権限よりすれば、」の次に、「同人を現場代理人とする旨の選任届自体が請負代金受領権限授与の表示としての意味を有するものでないことは明らかであり、また、同人が現場代理人であることから」と付加する。

三表見支配人に対する弁済の抗弁について

〈証拠〉によれば、長根は、一審原告天栄作業所の所長と自称していたことが認められるが、右が同人の一審原告における正式の職名であることを認めるに足りる証拠はなく、かえつて、〈証拠〉によれば、一審原告においては天栄作業所、同所長等の呼称を用いていなかつたことが認められる。もつとも、呼称のいかんを問わず、天栄村の現場に一審原告の事務所が設けられ、長根がその責任者たる現場代理人として前記のような権限を有していた事実は存する。

しかしながら、右現場事務所が一審原告の支店としての実質を有するものといえるかどうかの点についても疑問がないわけではないが、その点はしばらく措くとしても、本件請負代金の支払方法について当座預金口座振込みの約定が存したこと、長根が現場代理人として請負契約上有するものとされていた権限は前記のようなものであり、現実に同人の有していた権限も、右現場代理人としての権限のみにとどまるものではないが、その範囲は工事の施行に伴つて必要とされる附随的な事項に関するものに限られていて、多額にのぼる本件請負代金の受領権限をも包含することを推測させるようなものではないこと、それにもかかわらず一審被告が長根が支配人として右請負代金の受領権限を有するものと信じたのは、前記のように同人と一審被告の当時の執行部との間にけじめを欠いた馴れ合いの関係を生じていたためであり、しかもその原因は多分に右執行部の側の甚しい綱紀の弛緩にあつたことなど、さきに認定した諸事実に照らせば、長根が右現場事務所の支配人として本件請負代金の受領権限を有すると信ずるについて一審被告には重大な過失があつたものというべきである。そして、このように支配人としての権限の欠缺を知らないことについて重大な過失のある相手方は、商法四二条の適用上、悪意の者と同視せらるべきであるから、一審被告が長根に対してした請負代金の支払は、一審原告に対する弁済としての効力を有しないものといわなければならない。

四詐欺による損害賠償債権を自働債権とする相殺の抗弁について

1  一審原告の従業員であり、本件請負工事の現場代理人である長根が、真実は一審原告を代理して請負代金を受領する権限がなく、かつ、右代金を一番原告に持参して納める意思がないのに、これがあるように装つて、一審被告の村長や収入役をその旨誤信させたうえ、請負代金名下に合計五九八五万四三四五円の交付を受けてこれを騙取したことは、前記のとおりである。右事実及び前記のような長根が有していた権限の内容及び本件請負代金の支払に対する同人の関与の状況に照らせば、長根の右行為は、一審原告の被用者がその事業の執行についてなしたものというべきである。

2  一審原告は、長根の選任及びその事業の監督につき相当の注意をしたから同人の前記行為につき一審被告に対し損害賠償責任を負わない旨主張する。当裁判所は、右主張を失当であると判断するが、その理由は、原判決の理由の第一の三3(原判決三八枚目裏二行目から四〇枚目裏二行目まで)に説示されたところと同一であるから、これを引用する(ただし原判決三九枚目表五行目の「昭和四四年一一月一一日」の次に「千葉地方裁判所において」と付加する。)。

3  そこで次に、一審原告の過失相殺の主張について検討する。

長根による前記五九八五万四三四五円の金員の騙取は、一審原告の被用者たる者がその事業の執行について行つた計画的な加害行為であるから、一般的にいえば、右金員を騙取されるについて一審被告の側に過失があつても、これによつて一審原告の一審被告に対する損害賠償責任が著しく軽減されるべきものではないということができるであろう。

しかしながら、既に判示したところから明らかなとおり、一審被告が右金員を騙取されたのは、北畠村長をはじめ当時の一審被告の執行部において、一審被告側の都合から、一審原告との請負代金の支払方法についての約定に違反し、請負代金債権の譲渡問題の帰趨についても十分な確認方法を講じないまま、長根に右のような多額の現金を交付することにした結果であり、しかも、右のような事態に至つた背景としては、右執行部(小針収入役を除く。)が長根から長期間にわたり頻繁に饗応を受け、北畠村長に至つては多額の金員の供与まで受けていたことなどから、長根に対して気を許し、自分が請負代金を一審原告本社に持参すれば工期延長の承諾を得られるという長根の申出につき不審を抱かず、前後約四か月、六回にわたる前記金員騙取の間においてこれにつき一審原告本社に問い合せることもしなかつたという事情が存する。右のような事実関係に照らせば、一審被告の過失は極めて重大というべきであるのみならず、一面においてそれ自体が長根の不法行為に対する大きな誘因をもなしているものというべきであり、この点を考慮すると、一審原告の一審被告に対する損害賠償の額を定めるについては四割の過失相殺をするのが相当である。

右過失相殺後の損害賠償請求権の額は、三五九一万二六〇七円となることが計数上明らかである。

4  一審被告が一審原告に対し、昭和五三年七月一三日の原審第一二回口頭弁論期日において右損害賠償債権と一審原告の本訴請求にかかる請負代金債権とを対当額において相殺する旨の意思表示をしたことは、本件記録上明らかであり、右相殺の意思表示は右三五九一万二六〇七円の限度においてその効力を生じたものというべきである。

そうすると、本件請負工事の請負代金総額四億二六三〇万七五四四円(請求原因5項参照)から既に弁済された金額の合計三億六六四五万三一九九円(請求原因6項参照)を控除した残額である五九八五万四三四五円から右相殺にかかる三五九一万二六〇七円を更に控除した残額の二三九四万一七三八円が、右相殺後の本件請負代金債権の額である。

五工事の不良による損害賠償債権を自働債権とする相殺の抗弁について

本件記録によれば、一審被告は、原審第三回口頭弁論期日に陳述した昭和五一年三月二五日付の準備書面において、一審原告が本件第一次請負契約に基づいてした広域簡易水道新設工事には一〇箇所合計一四九〇メートルにわたり水道管回りの防護砂が敷設されていない不完全履行がある旨主張したが、その後原審第七回口頭弁論期日に陳述した同年五月二六日付準備書面において右主張を撤回し、その後昭和五六年二月二四日の原審口頭弁論の終結に至るまで、一審原告のした工事が不完全であつたことにより一審被告が損害を被つたとしてこれによる損害賠償債権をもつて一審原告の本訴請求にかかる債権と相殺する旨の主張をしたことはなかつたことが明らかである。そうすると、一審被告が当審においてかかる趣旨の主張をするのは、時機に遅れた防禦方法の提出というべきであり、また、右防禦方法が訴訟の完結を遅延せしめるべきものであることは、その内容及び従前の審理の経過に照らして明らかである。よつて、当裁判所は、民事訴訟法一三九条により職権で右防禦方法を却下する。

六以上によれば、一審被告は一審原告に対し、前記四の相殺後の請負代金残額二三九四万一七三八円及びこれに対する工事完成引渡後である昭和五〇年九月一一日から完済まで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払うべき義務があるというべきである。

第二遅延損害金請求について

当裁判所も、原判決と同様、右請求については、金二五一二万五七二四円の支払を求める限度でこれを正当として認容し、その余を失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、原判決の理由第二(原判決四三枚目表九行目から四六枚目表三行目まで)に説示されたところと同一であるから、これを引用する。

第三結論

よつて、一審原告の本訴請求は、前記請負代金残額二三九四万一七三八円と前記遅延損害金二五一二万五七二四円との合計額である金四九〇六万七四六二円及び内金二三九四万一七三八円に対する昭和五〇年九月一一日から完済まで年六分の割合による金員の支払を求める限度においてこれを認容し、その余を棄却すべきであるから、一審被告の控訴に基づいて右と結論を異にする原判決を右のとおり変更し、一審原告の控訴は理由がないものとして棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、九二条を適用して主文のとおり判決する。

(倉田卓次 加茂紀久男 大島崇志)

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